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koyasan workshop 2023

高野山における“まちづくり学習”の実践 2023

KOYASAN WORKSHOP 2023

Action research / 2023 / KOYASAN

 

2022年度のふるさと学習では、中学校の全学年が異学年協働形式の学習プログラムを通じてまちづくり提案に取り組んだ。2023年度は、この取り組みを発展させる形で、より具体的な成果を生み出すための社会実装型プログラムを企画・実施した。2023年度のふるさと学習では、1年生と2・3年生が異なるテーマに取り組んだ。

KW2023

ふるさと学習の企画内容

1年生は「高野山をより深く味わうための謎解きガイドブックを作ろう」というテーマで、2・3年生は「高野山の魅力を世界の人々に伝えるフードを作ろう」というテーマである。学習目標は、地域の関係者と連携した実践的な活動を通じて、まちづくりに関する知識やスキルを磨くことと、地域への貢献や協働の重要性を実感することだ。

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STEP1 観光客への街頭インタビュー

前年度までのSTEP1では,イマージマップづくりやマインドマップづくりを通じて生徒の都市認識を広げる手法を取っていた。しかし「高野町外の人が高野山をどう認識しているか?」を学ぶ経験も必要だと移住者から提案があり,高野山が客観的にどう捉えられているのかを知るために観光客へのインタビューに取り組んだ。

1年生の生徒らは「高野山に来た理由や目的」,「来訪回数」,「行きたいところ」,「どこからどうやって来たか」,「高野山に抱いていたイメージ」,「来訪した際の第一印象」,「良かったところ」,「再訪したいか」,「何月に来たいか」を質問した。インタビューを通じて,観光客の関心が高い場所は奥之院と壇上伽藍と金剛峯寺の三大名所に集中し,その他の場所への関心の広がりが乏しいことが明らかになった。

​2,3年生の生徒らは「高野山で食べた昼食」,「美味しかったもの」,「高野山を連想する食べ物」,「高野山にあったらいいなと思う食べ物」,「高野山で買ったもの」,「和菓子か洋菓子どちらが好きか」,「高野山全体で改善してほしいところ」を質問した。インタビューを通じて,観光客の高野山の食に関する認識は胡麻豆腐や精進料理に焦点が当たり,伝統を尊重しながらも気軽に楽しめるものを望む人と,伝統的な形式に忠実なものを望む人がいることがわかった。

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STEP2 社会実験プロジェクトの計画と実行

1年生の生徒らは,初回の授業において,高野町の観光政策の現状と課題について町長から説明を受けたあと,5人1組の4グループに分かれて役場職員の助言を得ながら謎解きガイドブックのテーマを検討した。この段階で「空海の人生」「高野山の神社」「高野山の参詣道」「高野山の祭り」の4テーマが確定した。2回目の授業では,高野山に関連する各種資料を参照して,ガイドブックのコンテンツ検討に取り組んだ。3回目の授業には,情報収集として金剛峯寺の職員への取材が教員Eの判断で行われ,4回目の授業ではその情報を基にガイドブックの内容・構成の検討及びデジタル企画書の作成が実施された。5回目の授業には,製品化候補となるガイドブックのアイディア選定コンペティションが町長,教員,筆者の審査のもとで開催され,「高野山の神社」と「高野山の参詣道」が製品化の対象として選ばれた。6回目の授業以降,生徒は10人1組の2グループに再編成され,ガイドブック製作に取り組んだ。完成したガイドブックは生徒らが観光客へ配布し,観光客による内容の評価はGoogleフォームを通じて収集した。

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STEP2 社会実験プロジェクトの計画と実行

2,3年生の生徒らは,初回の授業において,胡麻豆腐店主から高野山の歴史・文化と新たな発想を組み合わせた商品作成の心得についての講義を受けた。その後,5人1組の4グループに分かれ,新しい高野山フードの商品アイディアを検討し,2回目の授業で生徒らは「胡麻豆腐カレー」「胡麻豆腐パフェ」「胡麻豆腐三色だんご」「胡麻豆腐トゥンカロン」のアイディアを確定した。3回目の授業には,店主提供の自己評価シートを使用してアイディアの具体化を進め,商品企画書を作成した。続く4回目の授業では,製品化を目指す商品アイディアを2つ選定するコンペティションが胡麻豆腐店主の提案で開催され,店主,教員,栄養士,筆者が審査員として「胡麻豆腐パフェ」と「胡麻豆腐三色だんご」の商品化を決定した。評価基準としては,高野山の歴史・文化の反映度,胡麻豆腐の新しい食べ方の独創性,及び収益性が考慮された。5回目の授業には,10人1組の2グループに再編成され,生徒らは2案の商品アイディアを更にブラッシュアップし,「胡麻豆腐パフェ」は「五色幕パフェ」として,「胡麻豆腐三色だんご」は「空海の一生」として商品化することを決めた。6回目の授業には商品の設計図を作成し,7・8回目には店主の協力を得て試作品を製作した。試作品は店のスタッフによる試食評価を受けた。9・10回目の授業では,評価結果をもとに商品レシピの微調整を行い販売価格を決定し,11回目以降には販売促進ツールの作成に取り組んだ。完成した商品は生徒らが観光客や地域住民向けに販売し,Googleフォームを通じて評価を収集した。なお,「五色幕パフェ」の具材には隣町・橋本市より無償提供された柿が使用されており,橋本市で開催される「まっせ・はしもと〜柿まつり〜」においても出店した。

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STEP3 社会実験の検証・まちづくり政策の立案

社会実験を通じて得られた観光客のアンケート結果を基に考察を行い,まちづくり提案を検討している。1年生の生徒は,謎解きガイドブックが地域の活性化や観光振興に与える影響を中心に考察し,高野山の魅力をどのように観光客に伝え,彼らの経験を向上させるかを検討した。一方,2,3年生の生徒は,新たに開発したスイーツが地域産業の振興や国内外への情報発信にどのように寄与するかを考察し,伝統産業の継承と発展のための具体的な方法を検討した。

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STEP4 まちづくり政策の提言・意見交換

人が集まりやすい場所でポスターセッション形式の意見交換会を実施することを企画し,高野山大師教会中講堂で開催した。生徒らは社会実験プロジェクトの内容と成果,そしてまちづくり提案を発表したあと、保護者や小学生,町長,町議会議員,まちづくりに関心のある住民ら総勢約60名と議論した。1年生の生徒らが社会実験プロジェクトで制作した謎解きガイドブックに対しては,町長からデジタルパンフレットとして展開する提案を受けた。2年生の生徒らが提案した「中学生と大人がコラボして、伝統の継承と革新を融合したまちづくりを進めていきたい」という提案に対しては,町議会議員から「議会と子どもがコラボしたまちづくりプロジェクトに取り組まないか」という提案が持ちかけられた。

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