top of page

Kindai Univ.

Architectural Planning Lab.

logo

Project.17

Seminar 2024

2024年度卒業生の研究

IMG_5830.jpeg

過小規模校の中学校における教科教室制の導入が生徒の行動変容に及ぼす影響―高野山学びの杜を事例としてー

Research / Shunpei TAKAHASHI

本研究は、高野山中学校における教科教室型校舎の導入が、生徒の行動や学習態度に与える影響を明らかにすることを目的としています。研究背景として、生徒は教科学習だけでなく、交流や課外活動を通じて社会性を育む必要がある一方で、新たな校舎設計がその学習環境にどのように影響するかが注目されています。調査は、旧校舎と新校舎での学習環境を比較し、生徒の行動観察、アンケート、教員へのヒアリングを実施しました。結果として、新校舎の教科教室型とオープンスペースは、生徒の交流や自主性を促進する効果が確認されました。一方で、学年や教科ごとに異なる学習態度や集中力の変化が見られ、特に低学年では集中力の維持が課題として挙げられました。また、教員にとっては、環境に適応した授業運営の工夫が求められることが示唆されています。本研究は、地域社会の特性を踏まえた教育空間設計の有効性を示すとともに、長期的な評価の必要性を提起しています。

泉北ラボ.jpg

ニュータウンにおける自走型自治を目指す私設公民館「まちの家事室・泉北ラボ」の運営実態の把握 

Research / Yuto OISHI

 

本研究は、大阪府堺市にある私設公民館「泉北ラボ」を対象に、その運営実態や地域社会への影響を分析し、「自走型自治」の意義と課題を考察したものです。泉北ラボは、住民主体で運営され、多世代交流を促進する場として2022年に設立されました。施設内にはカフェ、ランドリー、コミュニティフリッジなどがあり、柔軟な空間設計によって利用者同士の自然な交流を可能にしています。特に、利用者のニーズを敏感に察知し、柔軟に対応するコーディネーターの役割が、信頼関係の構築やコミュニティ形成に重要な役割を果たしている点が特徴です。さらに、コミュニティフリッジは生活支援と住民間の連帯を生む一方、寄付品の不足や利用者の心理的抵抗感といった課題も存在しています。本研究は、泉北ラボが地域課題に柔軟に対応しながらコミュニティの再生を目指す新たな公民館モデルとしての可能性を示し、長期的視点での持続可能性の検討が必要であることを提言しています。

◆公益財団法人泉北のまちと暮らしを考える財団よりインタビューを受けました:内容はこちら

石切テンポラリーアーキテクチャー.png

テンポラリーアーキテクチャーによるプレイスメイキングとその効果の把握―石切参道商店街を対象としてー

Research / Yukina KUSHI

 

本研究は、石切参道商店街にあるクリエイティブ拠点「ひらくきち」において、テンポラリーアーキテクチャーを活用したプレイスメイキングの実践を通じ、その効果を検証したものです。プレイスメイキングは、地域コミュニティを基盤に公共空間を再設計し、利用者にとって「居場所」と感じられる空間を創出する手法です。テンポラリーアーキテクチャーは、柔軟性が高く短期間での実験的な空間活用が可能であり、地域の特定ニーズに応じた対応ができる点が特徴です。

「ひらくきち」では、1回目の「一体型」設置と2回目の「分離型」設置を行い、利用者の動線や滞在時間の変化を観察しました。「分離型」設置では回遊性が向上し、地域住民や子育て世代の利用が増加しました。また、仮設建築が利用者の自由な発想を促し、心理的負担を軽減する効果も確認されました。一方で、利用方法が明確でないと使いづらさを感じる課題も明らかになりました。

本研究は、テンポラリーアーキテクチャーが公共空間の新たな可能性を拓き、地域住民の主体的な関与を促進する有効な手段であることを示し、より自由度と柔軟性のあるデザインの重要性を提言しています。

なんば広場.png

なんば広場の滞留スペースにおける人々の滞留行動の実態分析

Research / Kazuki MORIWAKI

 

本研究は、大阪市の「なんば広場」を対象に、歩行者空間化後の滞留スペースにおける利用状況と人々の行動を分析したものです。なんば広場は、2008年の構想から2023年に歩行者専用空間としてオープンし、季節イベントの会場や滞留スポットを備えた都市広場として機能しています。広場設置前はタクシー乗り場や車道が占める空間で、放置自転車や混雑といった課題がありましたが、歩行者空間化により回遊性と利用者の快適性が向上しました。

本研究では、7月、9月、11月、12月の平日13時と17時半に調査を実施し、滞留者の属性や行動を分析しました。結果として、利用状況は季節や時間帯に大きく影響を受け、特に気温が高すぎる9月や寒さが厳しい12月では滞留者数が減少しました。一方で、暖かい時期には一人利用者が多く、寒冷期には同伴者利用が増える傾向が見られました。また、広場は飲食やアクティビティよりも、「何もしなくても居心地が良い」空間として評価され、都会の中で希少なリラックスできる場を提供していることが分かりました。今後は、広場の活用をさらに多様化させる可能性が期待されます。

雑賀崎.jpg

雑賀崎の漁業と「直接販売」から生まれる文化的景観の実態把握

Research / Syuma IKEDA

 

本研究は、和歌山市の漁村集落・雑賀崎を対象に、漁業を中心とした直接販売が生み出す文化的景観の実態を明らかにすることを目的としています。雑賀崎は都市計画法施行以前から自然発生的に形成された地域で、直接販売は地域の象徴的活動として価値を持ちます。研究はSNS投稿の分析、現地フィールドワーク、漁師へのインタビューを通じて実施されました。

結果として、漁港の風景が訪問者にとって特に印象的であり、SNSで広く共有されていることが確認されました。また、漁船から直接販売される新鮮な海産物は、生産者と消費者のコミュニティ形成を促進し、地域の社会的関係性を拡張する役割を果たしていることが分かりました。さらに、店舗形態は各漁船が独自に改善を重ね、多様化している点が明らかになり、地域の自然環境や社会的ニーズに適応する仕組みが確認されました。

これらの結果から、雑賀崎における漁港風景、直接販売、そしてそこから生まれるコミュニティが、地域の文化的景観を構成する重要な要素であり、持続可能な地域づくりに寄与していることが示唆されました。

無人駅.JPG

まちづくりの核としての無人駅活用の実態把握―湯浅駅と卯之町駅を対象として―

Research / Hiromine NISHIYA

 

本研究は、地方都市における無人駅の増加に伴い、駅をまちづくりの一環として活用する新たな方法や価値を明らかにすることを目的としています。全国の無人駅活用事例の文献調査と、湯浅駅(和歌山県)と卯之町駅(愛媛県)の事例調査を通じて分析を行いました。

湯浅駅では、飲食店や物販店、図書館、観光案内所、サテライト庁舎などの機能を併設した複合施設「湯浅えき蔵」が設置され、地域住民や観光客の利用を促進しています。卯之町駅では、飲食店や物販店のほか、郵便局や保育施設も併設され、住民ワークショップで出たアイデアを元にデザインされた待合室など、地域住民の意見を反映した設計が特徴です。

両駅では、駅を拠点にしたチャレンジショップや地域イベントの開催が行われ、駅が地域コミュニティのハブとして機能しています。特に若年層が学習や仕事の場として駅を利用するなど、多世代が関わる空間づくりが成功の要因とされます。本研究は、無人駅が地域活性化の拠点となる可能性を示し、持続可能な駅活用のモデルを提示しました。

bottom of page